名古屋のベンチャー企業が急成長期に人事制度を整える方法
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名古屋のベンチャー企業が急成長期に人事制度を整える方法

#1on1#採用#評価#研修#組織開発

名古屋のベンチャー企業が急成長期に人事制度を整える方法

「社員が10人の頃は全員の顔が見えていた。50人になった途端、何が起きているかわからなくなった」——名古屋のSaaS企業の代表が、苦笑いしながらこう話していました。

私はこれまで500社以上の企業の人事に携わってきましたが、急成長期のベンチャー企業が直面する人事課題は、中小企業や大企業のそれとは性質が異なります。「今の制度では回らない」「でも制度を作る余裕もない」——この板挟みの中で、いかにスピードを落とさずに組織の土台を固めるかが問われるのです。

名古屋は、実はベンチャー企業が育つ土壌を持つ都市です。製造業のDX需要、中部国際空港を活かした物流テック、自動車産業の変革に伴うモビリティ系スタートアップ——東京ほど注目はされませんが、着実に成長するベンチャーが増えています。しかし、「名古屋のベンチャー」に特化した人事制度の知見はまだ少なく、東京のベンチャーの事例をそのまま持ってきても、地域性の違いでうまくいかないことがあります。

名古屋市中区のSaaS企業、従業員が2年間で15名から60名に急拡大。この会社は急成長の最中に人事制度を一から構築し、組織の混乱を最小限に抑えながら成長を加速させました。その実践を紐解いていきます。


名古屋のベンチャーが直面する「急成長期の壁」

急成長期のベンチャー企業には、いくつかの典型的な壁があります。名古屋のベンチャーに特有の文脈も含めて整理します。

「30人の壁」と「50人の壁」

ベンチャー企業の組織課題は、従業員数に応じて変化します。10人までは「全員が見える」段階。経営者が全社員と直接コミュニケーションでき、制度がなくても回ります。30人になると「中間管理職が必要になる」段階。全員と直接話す時間がなくなり、情報の伝達に漏れが生じ始めます。50人を超えると「仕組みがないと回らない」段階。評価基準、給与テーブル、採用プロセス——制度として整備しないと、不公平感や混乱が表面化します。

名古屋のベンチャーの多くは、この壁にぶつかったとき、人事の専門家が社内にいないという問題に直面します。東京のベンチャーなら、人事経験者の候補者プールが豊富ですが、名古屋では「ベンチャーの人事経験者」自体が少ないのが現実です。

名古屋の労働市場の特性

名古屋は「安定志向」が強い労働市場です。大手製造業やインフラ企業への就職が「正解」とされる文化が根強く、ベンチャーへの転職にはリスクを感じる求職者が多い。この文化的背景が、ベンチャーの採用を難しくしています。

一方で、「名古屋でベンチャーに挑戦したい」という意欲的な人材は、候補者数は少ないものの、覚悟を持って来てくれることが多い。この「少数精鋭」の人材を逃さないための採用体制と、入社後に「ここで良かった」と思ってもらえる組織づくりが鍵になります。

東京のベンチャー文化との違い

名古屋のベンチャーは、東京のベンチャーと比べて「堅実」な傾向があります。製造業の影響を受けた「数字で証明する」文化が、良くも悪くもベンチャーにも浸透しています。これは、「勢いだけで突っ走って後で問題になる」リスクを抑える一方、「スピード感に欠ける」という評価にもつながります。

人事制度の設計においても、この「堅実さ」を活かすことが重要です。東京のベンチャーのように「とりあえず走りながら考える」ではなく、「最小限の仕組みを最速で作り、改善し続ける」——このバランスが、名古屋のベンチャーに合った人事制度構築のアプローチです。


経営数字から人事制度の優先順位を決める

急成長期は、やるべきことが無限にあります。限られたリソースの中で、何から手をつけるかを経営数字から判断しましょう。

採用コストの膨張を防ぐ

急成長期は採用に追われます。「とにかく人が足りない」と人材紹介に頼り続けると、採用コストが膨張します。年収500万円の人材を紹介経由で10名採用すると、紹介手数料だけで1,500万円以上。創業間もないベンチャーにとって、この出費は大きい。

名古屋市中村区のフィンテック企業では、採用コストが年間売上の8%に達していました。これを3%以下に下げることを目標に、リファラル採用の仕組み構築と採用広報の強化に投資しました。リファラル採用の紹介報酬(1名あたり30万円)を設定し、社員がSNSで自社の魅力を発信する文化を醸成。2年間で、紹介経由の採用比率が15%から45%に向上し、採用コストは年間売上の3.2%まで低下しました。

離職コストを最小化する

急成長期は、社員が「ついていけない」と感じて離職するリスクが高い。評価基準が曖昧、役割が不明確、意思決定プロセスが変わる——こうした変化が、特に創業初期から在籍している社員のストレスになります。

1名の離職コストを100〜200万円と試算すると、年間5名の離職で500〜1,000万円。定着のための人事制度に300万円投資して離職を3名防げれば、投資対効果は十分にあります。


急成長期に最優先で整備すべき人事制度

すべての制度を一度に作ることは不可能です。私の経験から、急成長期に最優先で整備すべき制度を3つに絞ります。

1. 等級制度と給与テーブルの策定

「なぜ、あの人のほうが給料が高いのか」——この疑問が放置されると、組織の信頼が崩壊します。急成長期は、入社時期や交渉力によって給与にばらつきが生じやすい。この不透明さを解消するのが、等級制度と給与テーブルです。

ベンチャーに適した等級制度は、シンプルで柔軟なものが良い。5〜7段階の等級を設定し、各等級に求められるスキル・成果・行動を簡潔に定義する。給与テーブルは各等級に対して「レンジ」(例:等級3は年収450〜550万円)を設定し、個人の実績に応じてレンジ内で調整する。

名古屋市の製造業DXベンチャーでは、6等級のシンプルな等級制度を2ヶ月で構築しました。完璧を目指すのではなく、「80%の精度で早く作り、運用しながら改善する」というアプローチです。この制度の導入後、「自分の給与がどう決まっているかわかるようになった」という社員のフィードバックが多く寄せられ、報酬に対する不満が大幅に減少しました。

2. 評価制度の設計

評価制度は、「何をすれば評価されるのか」を明確にする仕組みです。急成長期は、評価基準が経営者の主観に依存しがちで、「社長に気に入られるかどうか」が評価を左右するという不満が生まれやすい。

ベンチャーの評価制度で重要なのは、「成果」と「行動」の両面を評価することです。「売上をいくら作ったか」だけでなく、「チームに貢献したか」「会社の価値観に沿った行動をしたか」——この2軸で評価することで、短期的な成果だけでなく組織文化の醸成にも寄与する評価が可能になります。

評価の頻度は、年1回ではなく四半期に1回を推奨します。ベンチャーは変化が速く、半年前に設定した目標が陳腐化することがある。四半期ごとに目標を見直し、フィードバックを行うことで、変化のスピードに対応できます。

3. オンボーディング・プログラムの構築

急成長期は毎月のように新しい社員が入ってきます。「初日に何をすればいいかわからなかった」「誰が何を担当しているかわからない」——こうした体験が、新入社員の不安と離職リスクを高めます。

最低限のオンボーディング・プログラムとして、入社初日のチェックリスト(PCセットアップ、ツールアクセス権、自己紹介の場)、入社1週間のスケジュール(各部門との顔合わせ、事業概要の説明)、入社1ヶ月目の1on1(期待値の確認と困りごとのヒアリング)——これらを「型」として準備しておくことで、新入社員の立ち上がりが格段にスムーズになります。

栄エリアのHRテック企業では、「入社Day1パッケージ」と呼ばれる資料一式(会社の歴史、組織図、ツールマニュアル、よくある質問集)をNotionで整備し、入社前に共有しています。「入社前に読んでおいたので、初日から動けた」というフィードバックが多く、立ち上がり期間の短縮に大きく貢献しています。


ベンチャーの成長フェーズ別・人事課題と対応策

急成長期のベンチャーが直面する人事課題は、フェーズによって変わります。

フェーズ1:15〜30人(仕組みの芽生え期)

課題は「属人化」です。特定の社員がいないと業務が回らない、情報が特定の人に集中している——この状態を解消するため、業務の可視化とドキュメント化を進めます。人事制度としては、最小限の等級・給与テーブルの策定が優先です。

フェーズ2:30〜50人(中間管理職の登場期)

課題は「マネジメント」です。初めてチームリーダーや部門長になる社員が出てきます。プレイヤーとして優秀だった人が、マネージャーとして苦戦するケースは非常に多い。マネージャー向けの基礎研修(1on1の進め方、評価面談の方法、チームビルディング)を早期に提供することが重要です。

伏見エリアのSaaSベンチャーでは、新任マネージャー3名に対して、外部のコーチを月1回つけるプログラムを導入しました。1名あたり月額5万円×3名×6ヶ月=90万円の投資でしたが、マネージャーの成長により、各チームの生産性が向上し、離職率も低下しました。

フェーズ3:50〜100人(組織の再設計期)

課題は「組織構造」です。フラットな組織では情報共有に限界が出てきます。部門の分割、レポートラインの整理、全社会議の設計——組織構造そのものの再設計が必要になります。

人事制度としては、評価制度の本格運用、研修体系の構築、採用チームの専任化が求められるフェーズです。


名古屋のベンチャーが陥りがちな人事の落とし穴

落とし穴1:東京のベンチャーの真似をする

東京のベンチャーで流行っている人事施策をそのまま導入しても、名古屋の文化にフィットしないことがあります。例えば、「360度評価」を導入したが、名古屋の社員は「同僚を評価するのは申し訳ない」と感じて本音が出ない——こうしたケースが実際にありました。

名古屋の文化を理解した上で、制度をカスタマイズすることが重要です。

落とし穴2:制度を作って放置する

「評価制度を作りました」で終わりにしてはいけません。制度は「運用」して初めて機能します。評価面談の実施率、フィードバックの質、制度に対する社員の満足度——これらを定期的にモニタリングし、改善し続けることが不可欠です。

落とし穴3:創業メンバーとの溝を作る

急成長期に人事制度を整備すると、創業初期から在籍していたメンバーが「急に堅苦しくなった」「前のほうが良かった」と感じることがあります。創業メンバーへの丁寧な説明と、制度設計プロセスへの巻き込みが、この溝を防ぎます。


ベンチャーの人事に求められる姿勢

名古屋のベンチャーで人事を担当する方に伝えたいのは、「完璧な制度を作ろうとしない」ということです。

ベンチャーの人事制度は、事業の成長に合わせて変わり続けるものです。今の50人の組織に合った制度が、100人になったときにはそぐわなくなる。それは失敗ではなく、成長の証です。

「最小限の仕組みを最速で作り、運用しながら改善し続ける」——このアジャイルな姿勢が、急成長期のベンチャーの人事に最も求められるマインドセットです。

名古屋のベンチャーが持つ「堅実さ」と「ものづくりの精神」は、組織づくりにおいても大きな強みになります。数字で検証し、現場の声を聴き、着実に改善を積み重ねる——この東海流のアプローチで、成長と組織の安定を両立させていくことが可能です。


本記事は、東海地方のベンチャー企業における人事課題を長年支援してきた経験に基づいて執筆しています。個別の人事課題についてのご相談は、人事のプロ実践講座にてお受けしています。

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